maaq

261027

 『太陽を盗んだ男』の4Kリマスター上映を観てきた。人生のうちで間違いなく三本の指に入るお気に入りで、何度も繰り返し観た作品だ(それでも最後に観たのは約十年前にはなる)が、スクリーンでの鑑賞体験は今日が初めてのことだった。内容においても制作においても現代ではとても撮れないだろうなあという文字通り滅茶苦茶な作品ではあるものの、虚無とアイロニー、それからコミカルさが妙なバランスで編み上げられていて、何度観ても娯楽活劇としての引力を感じる。私はジュリーに強いあこがれがあるので毎度あの気だるげな佇まいに感化されてしまうし、池上季実子の、自由でしたたかで、それでいて無垢なやさしさのあるキャラクターも魅力的だ。不死身の菅原文太は言うまでもない。と、ここまではいつ観ても同じ感想だったのだが。所謂しらけ世代、イデオロギーとしてのノンポリという概念があまり身近でなかった自分にとって、この映画が「時代感」「社会性」のような実感を伴って胸に迫ったのは思いがけない体験だった。目的なき「力」の空虚さ、その滑稽さ、痛ましさ、そういうものが、時代に響き合ってより深い意味を帯びているように感じられる。

 駆け込みで観に行ったつもりだったが、興行がうまくいっていて上映期間の延長が決まったそうだ。今年帰らぬ人となった長谷川和彦のその映画監督としての歩みを思うと、少し複雑な心持ちになる。